米澤穂信『愚者のエンドロール』の最後はこのように締められる(ネタバレ…ではないと思うのだが…怪しい部分を抜粋する)。
L:実はわたしも
L:ひとの亡くなるお話は、嫌いなんです
TBS系金曜ドラマ『MIU404』を見ている。
MIU404第一話観た。テンポが速く面白い。私が志摩さんだったら確実に伊吹のこと殴ってるってタイミングで志摩さんが殴ってくれてとても安心した。
— 治野⚡️ (@harunote2016110) 2020年7月4日
あと野生的とも言える直感の扱いについてアンナチュラルとはまた違ってるからそこも面白かった。言葉でも数値としても説明できないものをチームとしてどう扱うかってところ。
— 治野⚡️ (@harunote2016110) 2020年7月4日
私は伊吹さんみたいな人身近にいたら許せないんじゃないかなって思うなぁ…性格が嫌いとかそんなんじゃなくて、嫌いになりたくないからそばにいないで欲しい、というタイプ。面白いね。
— 治野⚡️ (@harunote2016110) 2020年7月4日
いやー、伊吹さんの犯人に詰め寄るギリギリのシーンは私なら逆鱗に触れてるやつでギリギリアウトだな。ジョークとしてあのレベルをやる人を私は信用できない。でも別に伊吹さんが嫌な人なわけがない。面白いわぁ。
— 治野⚡️ (@harunote2016110) 2020年7月4日
最近は本当にドラマも観なくなった私だけれど「さて見てみるか…」と思って視聴したら、ドボンとドはまり、か。
第一話で「ぜってーーーー伊吹さん無理、苦手、私なら苛々すると思う」だった評価が、第二話で少しだけ甘くなって、第三話時点ではあまり気にならなくなっている。志摩さんのいうように、伊吹さんの得難い魅力があるからだ。
ドはまりしている、とは言え、キャラ推しというわけではなく、ストーリーの構成や演出が冴えまくっているってのももちろん魅力ではある、が、なんというか、音楽とシーンの相乗効果がすごいなと思う。サントラ早く聴きたいなと思っているところ。
こんなにも切なくて、やるせないドラマがあるのだろか、と思っている。このドラマを観て、私は毎回結構泣きそうになっている。泣かないけど。
このドラマを後追いで見ながら、私の頭のどこかでずっと引っかかってぐるぐる回っている言葉が、冒頭にあげた『愚者のエンドロール』の一節。
私は昔から『アンパンマン』よりも同時間帯に放送されていたサスペンスドラマの再放送を見て育った人間なもので、刑事ドラマが好きだしサスペンスドラマも好きだ。だから、フィクションで人が死ぬということについて、慣れていないわけではない。もちろんそれが虚構の中の話であるということ、現実にもひどい事件があり心を痛めている人がいて、一方で色々な加害者もいるということを、ずっと意識して想像するようにはしていた。現実と虚構を混同させないこと、現実の重みをきちんと想像することは視聴する側の礼儀だと思うから。
初めて『愚者のエンドロール』を読んだとき、だからLのことばに少しばかり新鮮さをおぼえた。そういう考え方も、あるな、そういえば、と思った。私は虚構を虚構として読んで観て消費していた。そのことが悪いわけではないけれど、でも、虚構はどこか現実と交差する瞬間があるもんな。そうか…。ぐらいの認識で。ピンとはきてなかった。奉太郎が言うように「俺はお前ほど感じやすくはないからな」である。
が、『MIU404』を観ながら、この「ひとの亡くなるお話は、嫌いなんです」が頭からこびりついて離れない。1話から共通しているのは、救われるか/救われないか、道を踏み外さず堪えるか/踏み外すか、の違いは、本当に、本当に、最後はちょっとした何かなのだということ。その何かがほんのちょっとしたことであることが、私にはとてもつらい。コップに水がぽたぽたと落ちて溜まっていくように、ある日突然劇的に変化するのではなく、小さなことの積み重ねの結果だけれど、最後、背中を押す手については積み重ねとは別の話で、運とかタイミングとか、そういうものなんだ。それが、とても悲しい。それって、どうにもならないのか?と思う。実際、手を差し伸べることはできる。けれど、多分それは即金な社会においては蔑ろにされがちな部分なのだろう。わかりやすくなければならない。結果がすぐに出なければいけない。コストに関しては必ず回収しなければならない。そういう社会では、きっと救えるものも救えない。わかっていても、私たちは自分が思っている以上に行動することができていない。多分考え方の根底を変えないと駄目な部分じゃないかなと私は思っているけど、まあそれは今後も考えることとして。
失ったものは、元には戻らない。人が亡くなることはその最たる例だ。刑事ドラマを見るということは、人が道を踏み外すその瞬間を目撃するということで、その一瞬のちっぽけさ?と失ったもののバランスがあまりに釣り合ってなくて眩暈がする。その不合理さみたいなものに、なんだか嫌気がさす。本当に今更なのだけれど。エンタメとして楽しめる気持ちもある分、なんだか嫌悪感が増してくる。ま、忘れて私は相変わらず刑事ドラマを楽しめる人間になるのだろうけれど。
そしてこのドラマの背景には昨今の社会問題があるわけで、今私が生きる社会に存在する不合理を私は見ているわけだ。見えないものは存在しない、なのだもの。残酷だ。となると本当にどうしていいかわからなくなる。オロオロするに留めるのではなく、具体的なアクションをしないといけないと思う。まあそれはまた別の話だ。
人が死ぬ話が今になって苦手になってきた。誰も、最初から過ちを犯そうと生きてきたわけではないわけで。「人間」救われてほしい、と思う夜。自分の感情過多で死にそうになる『MIU404』。主題歌が『lemon』じゃなくて本当に良かったと思っている。