根津と時々、晴天なり

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【ドラマ】万年筆と薬と口紅と/相棒 season6 第3話「蟷螂たちの幸福」

 ドラマ「相棒」が好きである。

 幼少期を、「相棒」と「科捜研の女」と「法医学教室の事件簿」と「京都迷宮案内」と「おみやさん」と諸々、サスペンスドラマを見て育った。多分それは私の人格形成においても大きな影響を与えているんじゃないかなって実は思っている。

 毎シーズン見ているわけでもないし、当然録画はしていないけど、他に面白い番組がなければ絶対「相棒」を見る。私と「相棒」の関係はそんな感じ。なんだかんだでやっぱり面白くて、見ていて飽きない。そういえば明日からまた新シーズンが始まるね、見られないけど、と思っているところである。

 いくつか好きな話がある。タイトルを覚えているのはよっぽど好きな証拠で、普通ドラマを見ているときってタイトルは気にしない。一応その回にはタイトルがつけられているけれど、番組中にでかでかと表示されることはないのである。

 だが、私はこの「蟷螂たちの幸福」のタイトルを覚えている。ものすごく好きだからだ。あとは

バベルの塔(年末に決まって再放送される多分人気な作品)とか

「ボーダーライン」(再放送されても鬱すぎてみたくないけど名作だと思う)とか

「BIRTHDAY」(幽霊を信じない右京さんが幽霊に遭う話)とか

「右京のスーツ」テーラーという職業のかっこよさが好き)とか

「すみれ色の研究」(研究者さんが不器用すぎて素敵)とか

好きな作品はいっぱいある。

 ここまで書いていると、やっぱり「相棒」が好きなので、新シーズンはできるだけたくさん見ようと思いました。以上おしまい。

 ではないのです。今回はこの「蟷螂たちの幸福」が好きなのでそれについて語ろうと思ったのでした。一言感想を述べるとしたら「愛の形は人それぞれ」ということでしょうか。

 

蟷螂たちの幸福

テレビ朝日|相棒6

↑ネタバレはこちら。

 ストーリーも独特というかすごいなぁと思いつつ、私がこの話で一番好きな部分はやはり、ゲストの荻野目さん(妻役)と江藤さん(夫役)の演技だと思うのです。文字通り迫真の演技。鬼気迫る演技。

 私はこの話で初めて荻野目さんという女優さんを認識したのですが、声色がつやっぽいのであります非常に。マジでかっこいいと思いました。←凡庸な言い方ですけど(笑)奥深い素敵な声だなぁと思うのです。女性にしては少し低めなのか迫りくる声。ベストセラー作家という役柄とも相まって、非常に品があり知的で風格がある人物がそこには立ち現われている。くう~~~この人抜きではこの話はここまで私の中では「名作」にはなっていないだろうなぁと。

 そして旦那さん役の方も素晴らしかった。ごく短いシーンで妻への狂おしいまでの愛情を表現しなければならない。ここで視聴者を引き込むことができなければ、夫婦で成しえたかったことのこれっぽっちも響かないのだろうと思います。右京さんや亀山君も言っていますが、夫婦が決めたストーリーは必ずしも人々が賛同できるものではないのであります。しかし「なんとなくわかるかもしれない」「ジーンときちゃったな」と人々に何か届くものがある。「その通りだよね」と言葉をかけることはできないけど「そういう考え方もアリなのかもしれないね」と言わせるまでの説得力を演技で見せつけなければならない。見事だと思います。

 ここからは私の個人的なツボを3つほど語って、最後に締めたいと思います。

万年筆

 右京さん&亀ちゃんコンビが作家・蓬生静流と対面して最後の最後。出来上がった原稿をものすごい速読で読み終わった後に、右京さんはまだ終わっていませんよ、と彼女に語り掛ける。その言葉にたちまち声を詰まらせながら、机に座り原稿と向き合う蓬生さん。そこで右京さんが、胸ポケットからサッと漆黒でつややかなボディの万年筆を取り出し彼女に差し出すのですね。この一連の動作がものすごく好きでして(笑)

 今まで万年筆の存在は知っていましたけど、本気で万年筆に憧れたのはこの瞬間じゃないかな?って思っています。正確に言えば、万年筆をサッと差し出せるくらいカッコいい大人になりたいと思いました。私は女なので紳士にはなれませんが、ホント素敵だと思った、右京さんのこと。

 このシーンは万年筆じゃないとダメだと思いますね。

 シャーペンは論外、ボールペンでも風格がない。筆はちょっと場違い。やっぱり原稿には万年筆。間違いありません。そもそも蓬生静流という人間の品格がありすぎて、この人ボールペンとか持つのかしら?って思っちゃうのでした。

 この事件のきっかけでもありますが、蓬生静流は末期のガンにおかされております。余命僅か。痛みをこらえながら死に物狂いで生きているわけですが、他人の前ではそんな素振りは見せず何もないように過ごしています。

 伏線として彼女が刑事さんの前で薬を飲むシーンがあります。アシスタントに水を一杯お願いして流れるように薬をさりげなく飲む。透明で切子細工をしてあるコップの水を入れて薬を飲む一連の流れが、まあ好きで(笑)このコップもさりげないですが「透明」で「切子細工」で、とそれだけで楽しい。変人ですね。プラスチックのコップでもないし変な取っ手もついてない。小道具で抱く印象って確かにあるよなぁ、うまく言葉にされないし意識もされないのだけど、と思ったシーンでした。

口紅

 これまた伏線になるキーワード「口紅」。

 最後らへんに鏡に向かい、唇に紅をひく(さす?)シーンがあるのですが、これまた美しく(笑)化粧って女の戦闘準備といいますか、私自身は化粧という行為に何一つ意味を見出せないものの、こうしてゆっくり何かを考えながら(もしくは心を空っぽにして)自分を作り上げていく行為は非常に興味深いと思いました。筆を使って丹念に紅をひいていくシーンは、そこは「スティックでテキパキと」だと味気ないのでしょう。素晴らしいです。

 

まとめ

 私自身は「女らしい」という概念?とうまく折り合いがつけられない人間ですが、「蟷螂たちの幸福」の蓬生静流という人物は、非常に美しく知的です。こういう在り方は一つかっこいいなぁと思わされます。

 こうして色々と考えていても、私は心底「頭がいい」ということに憧れがあるようです。物を考えられる人物でありたい。知的でありたい。賢くありたい。そういう願望が、好きになる作品の基準にも影響を与えているようです。面白いですね。

 「相棒」には色々な雰囲気の作品がありますから、特に基本設定に嫌悪感がなければお気に入りの作品を探してみるのも面白いのではないでしょうか?