根津と時々、晴天なり

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【VERIVERY】成人式カバーで思ったことつらつら

 スリットがざっくりと入ったシンプルな黒のドレス、スリットの隙間から見える膝上ぐらいまでのタイツ、こ、これはまさか、私は少しドキドキしてしまう。それは会場に漂う妖しい色香にあてられたからではなく、ここにはいない「誰か」の反応を窺う心の動きに似ている。誰かの批判が、怖い。

 

 さて、私が好きなK-POPグループVERIVERYのファンミーティングが有観客で開催され、私も当日慌ててオンラインチケットを買いました。その感想については少なくともこの記事とは別に書きたいので割愛させていただくとして、その中でパク・チユンの成人式(Coming of Age Ceremony)のダンスカバーを上記の衣装で披露しまして。

 本家のミュージックビデオではなさそうですが、一応貼っておきます。

Park Ji Yoon - Sung In Shik (Coming of Age Ceremony) 박지윤 - YouTube

 YouTubeで検索すれば、数多のK-POPアイドルがカバーしてきたのがわかるので(BTSとかTWICEもカバーしてたのね)見るといいと思います。本家の歌詞(和訳)も読んでいたのですが、なかなか挑戦的な曲で…これを「成人」に一般適用するのは難しい気もするが、そういう成人もある。全然、ある。

 2021年の段階でグループ内で唯一の未成年だったカンミンさんが晴れて成人になられたということで、それを踏まえてのComing of Age Ceremonyなわけですね。さらに補足すると、VERIVERYは上から下まで年齢差が大きいグループなので(とはいえ、真ん中は98年99年00年生まれとわちゃわちゃ団子になっているのですが…)グループの大半はとっくに成人で酒も飲めるわ~~~という年なのに、カンミンさんだけずっと置いていかれてたわけです。出演できる時間帯(アイドル側で時間も場所も決められるVLIVEとかいうコミュニケーションツールであってもそれは同じ)も制約あっただろうし、本人としてはやきもきする部分もあったかと思います。で、祝おうじゃないかと。Coming of Age Ceremony採用の理由などは私は追えてないので、調べてみてくださいな、という感じ。

 さて、経緯説明は以上。本題のパフォーマンスに入るわよ。

 私は危惧した。「これ、怒られるやつじゃない?」正直身構えました。それは「私はこれを許容できるが、許容できない人も、このご時世いるのではないか」と思ったからです。

 K-POPを比較的長く見てきた人なら覚えがあると思うのですが、昔は本当に男性グループのヨジャダンス、ガールズグループのダンスカバーがたくさんあったわけです。今は本当に少なくなったのではないかと思う。数として本当に減ったかはわからないけれど、実感としては減ったのではないかと思う。いわゆる「ポリティカル・コレクトネス」の考えが段々とメジャーになってきたことも影響している、のかもしれない。フェニミズム運動とも関連している、かもしれない。

 私がヨジャダンスを支持できない理由があるとすれば、それは男性が女性のダンスを踊ること、そこに女性性的な何かを軽んじたり馬鹿にしたりあえてフォーカスしたりすること、ではなく、演者の恥らう姿を鑑賞者として一方的に楽しむ、歪な権力性、関係性を個人として支持できないからでした(もちろんやりすぎな演出は駄目なんですけど、何に不快感を抱くかって個人の中でも確固たる基準があるわけではない、不安定なものだと思っているので、昨日OKとしてものが翌日NGなんてこともあるのでな…)。そしてこれは別にヨジャダンスだけの話ではないわけで。

 その点、VERIVERYさんたちのComing of Age Ceremonyはもう本気と書いてマジと読むやつで、本当に集中してやっていた。センターのカンミンちゃんには何かが降りてて神々しさまであった。ぶっちゃけあれほどまでに浸るとは予想外だった、というぐらい、踊ってた。

 では、彼らのパフォーマンスは、ポリコレ的な観点で、非難(批判ではないよ)されるものなのだろうか? 

 

 すごく気を遣っていたなと思う。衣装にしても女性的なものに全振りするのではなく、少し中性的な方に寄せていた。例えば上半分だけ見ればかなり中性的だ。下半分についても、おそらくスリット(女性的)なものをタイツでカバーしていてマイルドになっている。振付については、まあ女性的なんだけど、不思議と舞踊的な優雅さみたいなものがあって私はそちらの方に見惚れてしまった。ドンホンさんがいい感じなのよ。あとヨンスンはさすがに魅せ方をわかっていて、角度とか肩の入れ方とかがいいのよ。こんな感じで、メンバーごとにこの振り付けをどういうアプローチで消化するのか、違いがあって面白いです。あと思っていても実際に動けるのかというところに違いがあったり。

 だから今回の発見として、やっぱり男性の身体と女性の身体は異なるもので、身体的に動かしてきた(あるいは動かせる)体の動きと、文化的に規定されてきた動きってのはおそらく分けられて、腕のウェーブの仕方とかはやっぱり女性の方が上手いよなーとか、そういう驚きがありました。ありがとうVERIVERY。

 私は比較的肯定的にこのパフォーマンスを受け止めていますが、そうでない人ももちろんいると思う。ではその間にあるものは何か、それは埋まらない溝なのか、考える機会はあってもいいと思います。

 ちなみに逆に考えてみると、ガールズグループがゴリゴリに男性のダンスを踊るとき、男性側から見たらどう思うのですかね?かっこいいと思うのかな。私がVERIVERYのダンスを見たときに感じる複雑さみたいなものが発生するのかしら。発生しないとしたらそれは何故? そんなことも考えておりました。ま、これからも考えていきたいところです。