根津と時々、晴天なり

大好きなものをひたすら言葉を尽くして語りたいブログです。

【NCT】過剰でも不足でもなく/『Hot Sauce』を愛でる

 「えねをばら~をらえねおぶる~えねをばら~をらえねおぶる~(?)」と謎のイントロを気づけば口ずさんでいる今日この頃です。皆さまいかがお過ごしでしょうか。めちゃめちゃ好きな曲かと問われれば「そーでもない」というHot Sauce、しかし無意識に歌っている自分がいる。そういう曲、いいな、なんて思いながら、私はこの曲について何か書けることがあるだろうか、と考えておりました。

 基本的に衝動が湧かなければ書かないので「これは書かないパターンじゃない?」と思いつつ、頭の中にふわふわと漂っている思考の気配に形を与えてみると、意外と思っていることがあったのでこの記事を書いてみることとします。

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DREAMは完全体を前提として

 NCTの実験的な試みとして、メンバーの流動性、というのがあると思います。

 多くのアイドルグループは基本的に、「そのグループのメンバーは活動に参加しているのが常なり」だと思うのです。これって当たり前だと言われれば当たり前ですが、しかし当たり前なんてことはないので「そういうもの」だと人々が思っているルールに過ぎません。

 怪我などの不調や個人的事情で活動には不参加、あるいはグループからの離脱ということが時々ありますが、そのたびに、「怪我心配だな…」とか「大丈夫だろうか」など、理由に対する心配とは別の、もっと大きな漠然とした不安が生じるのは何故なんだろうな、といつからか考えるようになりました。

 今のところ「完全体」と呼ばれるものに対する信仰心や憧れがあるのだろうな、それは「何事も円満である」ということが一般的に尊ばれていることに繋がるのかしら、なんて思っていますが、ここでは特に掘り下げません。どうして人って仲良いことが素晴らしいことだと思うのでしょうね。いや、仲が良いことは素晴らしいことですが。協調性の生き物だからなのかな。

 NCTは最初に「完全体という概念はNCTにとってそんなに大切なことじゃないよ」ということを宣言したグループ(というかプロジェクト?)だと思っていました。拡張していく枠組みはいつまで経っても完全体になり得ません。なので私はNCTを見る時「こうあるべき形」ということを意図的に意識しないようにしていました。NCT127の新曲にウィンウィンの歌声が入ってなくても嘆かないように。元々アイドルを推す上で特定のメンバーを推すという感覚が強くないのも相性の良さに繋がった気がします。

 だがしかし。

 NCT DREAMだけは別だったのかなあ…なんてHot Sauce活を見ながら思ったのでした。マークもいるしジェミンもいる、チソンきゅんもいる。みんないて、みんなが踊り、みんなで歌い、みんなで笑い合う。それがどうして嬉しいのだろう、NCTの他のグループと何が違うのだろう。

 それは私がNCT DREAMに「完全体」という概念を持ち込んでしまっているからです。「メンバーがいるということを見せること」は「パフォーマンスで以て何かを表現する、魅せること」より「完全体」との親和性が高いのだろうなと思います。思えば、演劇は1つの役柄を数人で日替わりで演じることがあると思いますが、それが成り立つのは、演劇が舞台の上で繰り広げられる物語を魅せる芸術だから。

 ということで、私は心安らかにHot Sauceを見ています。

 ショケでマーク参加verのRidin'が披露されていたのも面白かったです。そこでマークが参加していなくても、参加してもどちらも面白いという状況。前者であれば、Ridin'のパフォーマンスはそのメンバーがいることが完全性に影響すると考えてるのかな?とも思えるし(マークは参加verは邪道だ)後者だった今回の場合は、マークはDREAMだし、DREAMであるからにはDREAMの曲であるRidin'を歌って踊らなければならん!ということとも受け止められる。まあ深い理由はないのかもしれない。オタクの深読みです。確かなことは、新たに振り入れと立ち位置とパートの調整をしたメンバー、お疲れ様です、というだけですね。

 

過剰でも不足でもなく

 私はChewing Gumという曲が好き(特にマークのラップよ!)だけれど、Chewing Gumのコンセプトというか初期NCT DREAMの売り方・見せ方は何ら問題がないものである、とは言えないと思っています。感覚的に言えば「過剰だな」と思った。ちょっと大きく見せている、余分に見せていると思った。

 が、Hot Sauceは過剰だとは感じないし、不足しているとも感じない。難しいダンスパフォーマンスだと思うけれど、また簡単に飲み込めるコンセプトでもないけれど、何も不足なく当然に消化しているように見える点で、NCT DREAMの成長を感じました。そりゃあ、彼らのデビュー時と比較すれば大人になったけれど、アイドル界で見ればまだまだ若い子たちなのだ。が、この貫禄よ。貫禄がありつつ若さも見せているこのバランス、Hot Sauce、もしかして私が思っている以上に良い作品なのでは…?

 あと、メンバー全員の良いところがちゃんと出ているところが良いなと思います。それぞれの尺を平等にすることは難しいと思うのですが、尺が多少ばらついていても、演出で以て平等だなと思わせることは可能だなということを感じました。全員に見せ場があるHot Sauce、安心する。

 

そのぐらぐら、何事

 本来なら全員の良いところをつらつらを挙げたいところなのですが、代表してちょっとすごすぎて驚いてしまったチソン君のダンスだけ愛でて終わりにしたいと思います。やばいぞ

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驚きポイント その1【0:05】緩急がやばい

 冒頭クラップする振りに入るところ。そこまで静かに穏やかだったのが、ガクンとギアが2段階くらい上がる瞬間に鳥肌が立ってしまった。その緩急差、怖い。

 

驚きポイント その2【0:53】かき混ぜるところ、ロボット?

 ホットソースをかき混ぜる印象的な振付のところ。肩を前にゆっくりと出す振付の肩から肘にかけての滑らかさがまるでロボットのような無機質な滑らかさで鳥肌。細かいアクセントに痺れる。チソン君ダンスお上手…。

 

驚きポイント その3【1:09】そのぐらぐら、何事

 ここが一番好き。右ひざを挙げた状態で足をふわんふわんと振って横移動するところ。移動に合わせて首から頭にかけてがぐらんぐらん細かく自然に揺れるのだけど、え、足元そんな難しいことしているのに、首、なんでそんなに柔らかく揺らせるの?横移動のときに伝わる体の揺れをスムーズに頭まで通している感じ?絶対この動き上手い動きだろ。

 

 ここまでで1番だし、もっともっと細かい「好き!」ポイントはあるのですが、総じて緩急のつけどころが上手いのがチソン君のダンスなんだなあと思います。そしてめっちゃ難しいことしているのに表情はあくまで涼やか。時々口角があがり、目じりが下がると「ち、チソンくんが笑っておられるーーーーーーー」とテンションが爆上がりします。細かいところの技術力が高いダンサーなのだろうなと、ダンス素人の私でも感じられるスタイル。

 

 そんなチソン君以外のメンバーも歌声にダンスに個性が滲み出ていて、今のNCT DREAMが存分に表現されているHot Sauce、見れば見るほど聴けば聴くほど発見があって楽しいです。しばらく味わっていきたいと思います。

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