根津と時々、晴天なり

大好きなものをひたすら言葉を尽くして語りたいブログです。

【映画】『BURN THE WITCH』を観てきた

 「ったく、大丈夫だと思っていたのになんでチケット買っちゃったかなぁ、、、1800円だよ1800円」とぶつぶつ呟きながら10月2日(金)の夜に某駅でやばい目つきをして早歩きしている女がいたら、多分それは私です。

 ということで、公開初日に観に行きました『BURN THE WITCH』。

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 「公開初日」なんて、あなた気合い入っているんですねぇ…なんて言われたらちょっとどうしていいかわからない、確かに久しぶりに映画館に行くかと思ったけれど、行こうと思った時に行かないと永遠に行かない引きこもり体質なだけです。ただ余裕あるときに行くべきですね、反省します(ちゃんと仕事は片付けました)。

 

dorian19.hatenadiary.jp

 

 最初に、めちゃめちゃ抽象的な感想をばーーーっと書きます。書かずにはいられないというか、スタンスとして書かなければと思いつつも本編の感想には関係が無いので好きなように読んでください。

 私は、何か作品を観て(読んで)「快・不快」ってのを考えたことがないというか、気にしないというか。それは前提としてとても恵まれた環境で生きてこられたからじゃないかとか、そういうことを考えます。私は豆苗を切ったときの根元、捨てられてしまう部分を見るのがすごく苦手なんですけど(もう本当に苦手)そういう「生理的に無理」ということはあるにせよ、考え方として「これは私は無理」と思うことがあんまり無い。「こういう考え方があるのか」と新鮮に感じ、その上で「その考え方は駄目ですよ」ということは考えますが。

 端的に言えば、女性の見せかたとして何は駄目で何は駄目じゃないのか、考えるのは難しいということです(基本的には「ダメ」と思う人側に寄り添う必要があります)。BURN THE WITCHに出てくるドラゴン憑きのバルゴさんは、のえるちゃんのパンツを追いかけまわしているどうしようもない奴ですが、それはどうなのだ?(駄目だろ)で、作品として描くことはありなのか(わからない)という問答です。私自身はこの設定に対してものすごい嫌悪感を抱いたわけではありませんが、もしかしたら嫌な気持ちになる人がいるのではないか、ということを考えてしまったわけです。そして一度そのようなことを考えると、作品を人に勧めることはできなくなります。嫌な気持ちになってほしくは無いからです。考えすぎだと一笑に付されてしまうかもしれません。まあ私の問題なので笑ってもらってもいいです。

 私のちょっとしたモヤモヤに触れないまま感想を語るのは嫌だったので初めに書かせてもらいましたが、身体の問題って本当に難しいというか、どう描かれるのかってのは漫画だけでなくアニメもゲームもあらゆる創作にある問題なんだと思うんですよね。私が「うわ、きっつ」と思うことは無いけれど、なんというかその本人の目線でそういう見られ方をされるかもしれないという視点は欠如しちゃうのかなぁ…うーーーん、云々と。

 ダセえメッシュをお洒落だと思って取り入れる男より、女の子のパンツを追う方が数倍もダセえだろ、という考えが当たり前である世の中であってほしいなと思います。バルゴさんはむしろそれ以外の邪念が無い、驚異の鈍感さという点がマジで化け物だと思っていますが、いくらのえるちゃんが付き合ってくれているとはいえ、本当に考えろ、僕たちで成り立つコミュニケーションなんだとか言ったらマジでぶっ飛ばす、のえるちゃんにボコボコにされろ、でも最後の「よかったね…ノエルちゃん」の距離感は「わかってる」やつなんだよな…マジで何者なんだバルゴ。

 

 はーーーーーーーい。気を取り直して『BURN THE WITCH』の感想です。

 遅れての鑑賞でしたけれど、ざっと1時間弱。大スクリーンで見る久保帯人作画の線は本当に気持ちが良かったです。BLEACHの絵が好きなんだよ~~~~と思う人は多分観たら楽しめると思う。BLEACHのアニメとはまた違った線で、本当に漫画に載っているあの線に色が塗られて動いている!という感動します。しかもその色がまた絶妙で、ちょっと淡い感じがあって優しいのが好き…。制服のくすんだ緑色とか、メイシーちゃんの髪色とか。すき。話も結構面白かったです。退屈だとは思わなかった。メイシーという人物を軸に、特別とは、魔法とは、ということについて考えさせられます。所々テンポが…というところも、私は予定調和を崩された感じがあって面白かった。

 

 ※以降ネタバレがありますので注意願いします。

 

 

 

 

 

そこは「病む」ところでしょう

 予測していたものが裏切られたと思ったのがニニー(以降ニニーちゃん)と彼女の元同僚メイシーが対峙するところ。

youtu.be

 予告でもがっつり登場するところです。その前の場面で、メイシーに拾われたドラゴン「エリー」が彼女の心の声を代弁するかのように彼女の部屋のテレビをぶっ壊すシーンがありますが、この時私は「(やばい、やばいってこれは。メイシーちゃん完全に堕ちてるやん。病んでるやん。自分の負の力制御できてなさそうじゃん、これは、やばい)」って無駄に恐怖したんですけど(流石早見さん)その流れでメイシー vs ニニー(&のえる)となるか、と気合いを入れたところで、ちょっとコミカルなカット(メイシーはニニーちゃんが好きすぎるのです)が入る。私、ずっこける。

 無意識に「そこは病むところでしょう」と思ったタイミングで、メイシーがロッカーみたいなものをぶん投げているのは本当に面白かったし「やられた」と思いました。やっぱり観る側としても「次はこうなるだろう」みたいな無意識の予測を働かせているのだけど、そこが狂わされると嬉しいです。あと、なんでもかんでも「この子は病む」と思っちゃいけないなと思いました。

 

正義とか愛だとか?何それ。

 BURN THE WITCHでいいなあと思ったのは、主人公のニニーちゃんとのえるがそれぞれ表面的には「実績の為」「お金の為」でドラゴンに関わる仕事をしていることです。愛とか正義とか夢とか希望とか。それは何一つ悪くないけれど、実際私の日々の行動のモチベーションとしてそれは無いんですよね…魔法使いじゃあるまいし。でも生活ってのはそういうものじゃないのかなと思うんですよね。そしてどこかで愛とか正義とか夢とか希望も、数パーセントは入っているような。だから彼女たちの仕事に対するスタンスは「おとぎ話だから私には関係ないもの」ではなく、「ちょっとわかるかもー」なものなのです。逆に、愛とか正義とか夢とか希望ってのは熱量が凄まじくそれだけドラマティックなものなので、話としては面白いのだろうなあと思います。

 

特別と魔法

 そしてやっぱり一番はキーワードでもある「魔法」のこと。ニニーちゃんの「おとぎ話なんかクソでしょ」で始まる部分は名場面でした。魔法が途中で解ける理由について本当のところはみんなわかってない。「魔法が途中で解けるのはそれが自分の力じゃないからよ」カーーーーーーーー痺れた。その上でニニーちゃんはそれでも魔法をかける側として魔女としてドラゴンと関わっているし、表ではアーティストやっているってところまでがかっこいい。魔法をかける/かけないってのは、かけたいと思っていてもかける側でいられるかどうかはわからないってところが残酷で面白い。メイシーはかける側なのにその器が自身の魂と合ってない。それはそれで苦しいことなのだろうなと思います。三人の魔女(魔法をかける側の人間)のうち、メイシーは依存しているニニーちゃんを見ていますが、ニニーちゃんとのえるは毅然とシンデレラを見ている。この対比がいいです。

 

個人的には

 「話を聞かない」というのも面白かったです。読み切りで、バルゴがそもそもドラゴン憑きだとわかるまでの話が描かれていて、その中でのやりとり、幼馴染として生きていたドラゴンとの会話で「言葉が通じない」ということが強調されています。魔女を喰えば不死身になれるという逸話を信じているドラゴンと、それは嘘だからと否定するニニー、まったく聞き入れる余地がないドラゴン、とか。バルゴの叫びを「言葉が通じねえなら死ね」と一蹴するドラゴンとか。そしてシンデレラを制止しようとするメイシーの叫びが届かない中ニニーちゃんが「通じない相手にはどうやったって通じないの」と言うところとか。

 聞かない、聞こうと思わない相手には何を言ったって無駄。それが実はニニーちゃんとメイシーとのゆるゆる日常パートで思いっきり表現されているのが皮肉なんですよね…四川麻婆豆腐の中でピリリと効いた山椒かよ、ってくらい辛い。多分これが一番私には刺さってます。ニニーちゃんとメイシーの関係性、恐ろしいよ。まあ、のえるちゃんとバルゴさんも同じかな…。「聞かない、聞こうと思わない相手には何を言ったって無駄」である相手がダークドラゴンなら問答無用でぶっ飛ばすけど、人間にはそれが通用しないってのは正直めちゃめちゃ面白いです。それならばドラゴンとは何なのか。ドラゴンの中でも人間にとって有用なものとして共存できている種もいれば、人の悪意に染まったダークドラゴンは討伐されてしまう。身勝手でゾクゾクします。

 

 このほかにもダセえメッシュお兄さんことブルーノさんとリッケンバッカーのやりとりとかね。リッケンバッカーくん、完全に青のリザードンなんだけど。翼の一枚を怪我したリッケンバッカーくんにかける「いい子だ」という言葉と慈しみの眼差しで帳消しにするのは許せん。血の気が多く感情突かれて超法規的手段も厭わないみたいなところは正直この人を長官の一人にしているドラゴン管理局みたいなところ大丈夫かと心配になっちゃうよ。あとマスクはダサいという解釈が正しいのかどうか難しいですね。BLEACH破面かよと私は笑っちゃったけど。

 あとはあとは(まだまだ出てくる)ドラゴンのデザインとか(最初に登場するダークドラゴンのデザイン好き)おすしちゃん可愛い大正義とか、一番ヤバい人は能ある鷹は爪を隠すで上司のおっさんだよな、なんだあの人とか、笛と銃の武器の可愛さとか、詠唱とか。シンデレラのヤバさとか人的物的被害とか。挙げたらキリがないです。

 

 どうやらシーズン1ということで、これからどれくらいの感覚で進んでいくのかはわかりませんが、気ままにゆるゆる追ったり追わなかったりできたらいいなぁと思います。主題歌の『Blowing』も最高でした。映画ってば、やっぱりエンドロールの時間が最高なんすよね。