根津と時々、晴天なり

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【音楽】aikoの『ストロー』を聴きながら震える

 aikoをあまり知らない人生だった。知っている曲は『KissHug』と『恋をしたのは』だけだ(『カブトムシ』のサビを歌えと言われても、たぶん無理だ)その数少ない「知っている曲」に『ストロー』という曲が加わるのだけれど、『ストロー』最高だなと思いながら朝の通勤で聴いていたりする。

 歌詞っていいな、と思う。表現の実験場。言葉の遊び場。なんとなく自分のパソコンのテキストファイルを検索かけたら(デジタルで日記を書いているときもあるので)思いのほか「ストロー」という単語がヒットして驚いている。多分私が飲み物を飲むこと、喫茶店やカフェで、テイクアウトでドリンクを飲むのが好きでその描写を入れると必ず入っちゃうんだろうなと思うのだけど、つまり何が言いたいって、ストローって飲み物を飲むときに使うものなんだよな、という当たり前かもしれないけどそんなこと。

 最近「呪い」について考えていて、といっても、大したことじゃないけれど、「祝う」という言葉と漢字が似ているなとかそういうこと。そうして「呪い」についてぼんやりと考えながらこの曲がシャッフル再生で流れたとき、はたしてこれは「祈り」なのか「呪い」なのか、どちらなのだろうと思った。

 「祈り」とは「神や仏に願うこと」であり「心から望む、希望する」ことらしい。ここで強く願っているのは「君にいいことがあるように」ということだ。「君に良いことがあるように」と願うことと、「赤いストローをさしてあげる」は冷静に考えればよくわからない。「赤いストローをさしてあげる」は果たしてあたしと「君」で意味が了解されていることなのだろうか。それとも、あたしだけがその胸に秘めているおまじないなのだろうか。なんにせよ、私には「君にいいことがあるように」という願いがどうしてストローとつながるのかわからないのにわかってしまう。それが恐ろしいことだと思う。

 関係ない二つのことが、あたかも当然のようにつながっていると思えてしまうこと。そのように錯覚させる能力、誰かにいいことがあるようにと願うその力が二つをつなげてしまうということ。想像力は無限大とか、ほんとそれ。怖くないですか。

 祈りも呪いも、エネルギーみたいなものは一緒で、中身が相手の良いことを願う「善」なのか、不幸を願う「悪」なのかの違いでしかない、この脆さがドキドキするね。それだけの精神エネルギーがあるaiko、怖いってことなのだ(そうなのか?)aikoが人を呪う歌があるのかはわからないけれど。

 飲み物を飲むときに、私たちはストローを使うことがある。「君にいいことがあるように」と差された赤いストローでオレンジジュースを飲む「君」。そのの正面で、テーブルに頬杖をついてニコニコ笑うあたし。繰り返し込められた祈りがもし呪いに転換するならば、ストローには毒が塗られるのかな。オレンジジュースが吸い込まれる唇をどきどきしながら見つめるのだろうな。

 なんにせよ、『ストロー』という曲は最高だと思う。日常のささやかな祈りが溢れてるから。

 

ストロー

ストロー

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