根津と時々、晴天なり

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【漫画】闇堕ちを知った日/『ムヒョとロージーの魔法律相談事務所』4巻

 以降の文章は『ムヒョとロージーの魔法律相談事務所』4巻以降のネタバレを含みます。ご注意ください。

  

 色々と話題になっているらしい少年ジャンプ漫画『チェンソーマン』の第一話を読む(公式HPから無料で読めた)。あまり得意な漫画ではなさそうだけれど、色々と最新話まで調べてみると(その過程で普通にネタバレを踏んでいる。)話題になるだけあって面白そうな漫画だなという印象。そこから、この雰囲気どこかで…と記憶をたどった結果、大して漫画を読まない私が行き着いた先は『魔人探偵脳噛ネウロ』(2005~2009)であった。

 今よりずっと幼い頃に「ううううう気持ち悪いよう…」と思いながらもなんだかんだ読んでしまっていた謎の中毒性。単行本では絶対買わないが本誌に載っているとついでとばかりに読んでしまう現象。ネウロ大好き!という知人もいたし、人を引き付ける何かはあるのだろうけれど、絶対気持ち悪いと思っちゃう作品ことネウロ。でも好きの反対は「興味ない」なので、別に嫌いなわけではなかった。読むのがしんどいだけで…。そして、ネウロに感じた独特の気持ち悪さをチェンソーマンにも感じてしまう。スプラッタなところやグロテスクなところ、その先にあるもの。それが何なのかということを言葉にするのは、まあ、色々と難しい。

 ネウロ連載時にはかいがいしく『少年ジャンプ』を買っていたのもあって、あの頃掲載されていた漫画は私にとってやっぱり印象深い。というかあれしか漫画を知らないと言っても過言ではない(それもどうかと思うが)。中でもお気に入りだったのは『ムヒョとロージーの魔法律相談事務所』(2004~2008)であった。

 細かいあらすじ説明は省く。悪い霊が出てくる、その霊を裁判官や執行人が適切に魔法律のもと裁いていく話だ。ジャンルだと、ダークバトルファンジー

 今の私が読むと、主人公のひとりであるムヒョこと「六氷透」の、合理的でシニカルな感じ、つーーーーんとした感じ、勝手にせぶち(アイドルのSEVENTEEN)のウジ君に引き継がせてしまっている。身長的な面があること否めないけれどそれは申し訳ない。でもムヒョとウジくん似てる気がする。そしてよくよく考えてみると、それほど似ていない気もする。でも、ムヒョはウジくんである!(←?)

 何故ムヒョローが好きだったのか。色々あると思うけれど、ダークファンタジーとか魔法とか、あとは専門職の人がそこで培った知見をもとに解決していく感じも好きだった。「ぷろふぇっしょなる」が私は好きなのだ。そしてこの漫画に登場する女性たちがかっこよかったというのもある。特に私は魔具を作るリオ先生が好きだった。リオ先生の弟子がビコちゃんなのはとても良い…ビコちゃんから見たリオ先生、師匠、ぐうううう(語彙を失う)

 

 そんなリオ先生の話となる4巻が急に懐かしくなってしまい、電子書籍で4巻だけ買う。便利ですね!電子書籍。基本的に紙の本派ですけど、漫画は電子書籍にしちゃおっかな…と鞍替え。何故なら漫画は冊数が多くなりがちだから!なるべく書店や作家さんにきちんと還元されそうなショップ選んで買いたいな…云々思っているところ(amazonだったけどそれはやめて、今はhontoにしている。手探り)

 

 さて第4巻は、監獄に収監されてたヤバい霊、顔剥ぎのソフィーちゃんを封印していてお札(ビコちゃん作成)が剥がれちゃったっぽい?やばくない?ということで、ムヒョロージーリオ先生ビコちゃんでその監獄に調査しに行くよ!な回である。顔剥ぎソフィーちゃんの怖さは、うだるようなこの暑さの中でも鳥肌モノの魅せる展開なのでそれはそれで読んでほしいのだけど、メインはここから。ソフィーちゃんが強かったので全力で対応したムヒョはエネルギー切れ。急いで然るべき処置をしなければならないところで、なんだかリオ先生の様子がおかしい。「ムヒョを渡しなさい。そうすればあなたたち(ロージーとビコ)は助けてあげる)」とか言ってくる。なんと、リオ先生、ムヒョ(というか魔法律の協会)に敵対する勢力の一員だったのだ!信頼できる魔具のプロフェッショナルが何故…?ムヒョやビコたちの先生でもあり、仲間だったのに…?そんな、リオ先生…。

 まさかの裏切り。あの優しいリオ先生の様子がおかしいよう!と当時の私はだいぶ混乱し嘆き悲しんだ記憶がある。だからとても印象に残っているのだと思う。きっと私は、この時「闇堕ち」という概念を知った。それはとても悲しいことだということも、知った。

 

 闇堕ち。愛しき闇堕ち。天から地へ。希望から絶望へ。どこかのインキュベーターの言葉ではないが、その転換には膨大なエネルギーが生じて、だからこそ私たちは闇堕ちなるものに惹かれていく。そのエネルギーの強さに痺れ、もう一度それを浴びたいという欲求にさらされる。そのエネルギーの強烈さに目が眩んでもしかしたら失念しているかもしれないけれど、基本的には闇堕ちって悲しいことなんだよな、とも思う。悲しいことなんだよ。すごく悲しいことなのだ。

 

 時々緑を求めて寺社にふらふらと吸い寄せられるかのように寺社に足を運ぶことがあるけれど、丁寧に結ばれているおみじくとか、絵馬とか、お参りする人とか、そういう光景を見ていると「願い」ってのはそれはそれは強いエネルギーなのだと感じてしまう。強いからこそ、脆く、弱い。

 ムヒョローの好きなところは他にもあって、ムヒョという人間は魔法律を諦めなくて。今回のリオ先生の話も「もしかしたら最悪な事態は防げるかもしれない」と、あの時魔法律家が助けてくれなかったリオ先生を、今度こそ魔法律で救おうとする。それは目を輝かせて希望を熱く語るのではなく、あくまで自分の信念として、魔法律家のプロとして合理的な六氷透の姿がある。私はそれにちょっと安心してしまう。確かムヒョにも色々あったと思うのだけど…うろ覚えだ。これは18巻コンプリートするしかないのか?

 ネタバレだけれど、結局、リオ先生もそして作中に登場するラスボス的存在(ラスボスではないけど)ムヒョの友人であるエンチューも最後は救われる。ムヒョローは闇に堕ちてしまった人がもう一度這い上がる余地を与えてくれる。私はそういうところもすごく好き。やり直せないなんて、それこそ悲しすぎる。人はいつでも堕ちる可能性を持つわけで、それは人として強いとか弱いとか関係ない。むしろ願いが強いほど堕ちたときの反動がすごそうで、さて、願いとか希望とかそういうものをどうしたらいいんだろうな、と改めて考えてしまう2020年、夏、であった。