今年はもう遠出することはできないだろう。
この事実を、私は今のところを受け止められているようだ。
出かけるのは好きだが、自分の中でかなり意識的に出かけているのであり(出かけないと自分が駄目になりそうで)出かけなかったら出かけなかったで何とかなってしまう人間である。が、やっぱり知らない場所に行くのは楽しいものであり、とても刺激的なことだ。意識的に出かけようとするのは正しい。そして今は遠出しにくい、ということで、身近な範囲で、無理がない程度に、行ったことがない場所へ、出かけられたらいいなとか思っている。例えば食べ物屋さんなんかは最たる例だ。
ということで、新宿に用があったため「都知事選前でタイムリーだしな」と都庁の職員食堂に赴くことにした。
都庁の職員食堂は第一と第二庁舎にそれぞれあって(32階と4階)私は第二庁舎の方に行った。
思えば都庁に行った記憶はなくて、その近辺に共通して言えることだけれど建物が高く車道が広く人通りが少ない(通路みたいなところは往来が激しいけど)。なんとなく「バベルの塔」という言葉を思い浮かべる。特に意味はない。
広い。
事前知識無く行ったので5分くらい彷徨ってしまったのだが、なんと都庁、職員食堂に行くためには来場者向けの受付が必要なのである。びっくり。名前や来庁目的、電話番号などを端末に入力し(この端末もなかなか新しかった)QRコードを発行、それを守衛さんみたいな人に渡して一時通行証を受け取らねばならない。なおこのご時世なので非接触型の体温チェックもここでする。これが東京都か。
こんなことをするので、割と穴場ではないのかと思う。まあ周辺のビルから多少歩くので、そもそも一般の人はあまり来ないところなのかもしれない。情勢の問題なのかどうかわからないけれど、私の前後で食堂目当てで受付している人はいなかった感じがある。
東京野菜ランチ(710円、ご飯大盛り無料、ありがとうございます)なるものを食べる。ヘルシーが売りということで、カロリーは控えめ。定食、大好きだ。色々なものが食べられるし、ご飯と汁物の組み合わせが盤石すぎる。食べたら幸せになれる食べ物、それが定食。
ソーシャルディスタンスということで、4人掛けテーブルがあったとしてそのうち3席は封鎖されているという徹底ぶり。都庁からコロナ陽性者が出ました、なんて言いたくないんだろうな、まあ私は一般人だけど、と思いながらもぐもぐ雑穀米を食べる。エレベーターや満員電車とこの食堂、どちらがリスクかって圧倒的前者なのだけれど、やっぱりどこか行くには罪悪感を抱いてしまう。この若干の抵抗が外出を躊躇わせる。
社員食堂。食券を買う。トレイを持って、カウンターに食券を差し出す。従業員さんが差し出すお皿をどんどこ自分のトレイに乗せていく。箸やスプーンもがばっと掴んで乗せる。進む。空いている席を探して座って食べ始める。
これだけの工程を流れるようにこなしていく他の人たちに交じって、私もぎこちなく消化していくことがスリリングで楽しくて新鮮。絶対後ろの人に迷惑かけていると思うけれど、多分この場所で食べるのは一回きりなので許してほしい、と思いながら、色々な場所の社員食堂にこれからも機会があれば潜入したいなと思う。あと社員食堂の良いところは、テーブルが広いところが多くて開放感があるところかなと思います。場所によりけりですが。
ゴゴゴゴゴ、という効果音が入りそうなくらいの威圧感。