根津と時々、晴天なり

大好きなものをひたすら言葉を尽くして語りたいブログです。

【gugudan】ただ一つの鉢を慈しむように/セジョン『植木鉢』

 感性という言葉を使いたくない。感性が豊かだという表現はなんだか逃げな気がする。負けた気がするから。

 


세정 (SEJEONG) - '화분 (Plant)' Official M/V

 

 まだ寒い三月の帰り道。春になっても着たい洋服なんてない。まだコートを着ることができて安心してしまうのが不思議。そんな日に私はこの曲を聴いた。

 

 言葉をまるっと包み込む水の気配。高濃度の保湿液でたっぷりと潤っていてとにかく満ち満ちている曲だと思った。これほどまでに静謐で、しかもそれを保ててしまうことがすごい。

 たっぷりしているのに余白がある。語られない言葉、鳴らない音の空白には、きっと聴く人の記憶や感情がスッと入り込むのだろう。まだ一日が始まっていない、洗い立てのシーツのような朝にコーヒーを飲みながら聴きたい。食材をどっさりと買いこんだスーパーのビニール袋を手から提げて、夕暮れで紅く染まる空を見ながら帰り道に聴くのも良い。誰かの孤独に寄り添い、孤独との付き合い方を一緒に探してくれるような曲だ。そんな曲を、今、聴くことができて、私はとても嬉しい。

 一つの植木鉢を慈しむように、生きることを愛でていけたらそれは素晴らしいことなのだろう。静かに。植木鉢をガシャンと地面に叩きつけたくなることもあるけれど、そこはグッと堪えて。自暴自棄にならないで。たしかに生活を続ける力が私は欲しい。この曲はきっと私を助けてくれるはず。そして私もこの曲を信じている。静かに。確かに。聞き取って。

 

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