根津と時々、晴天なり

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【読書】益田ミリ『前進する日もしない日も』を読んで思ったこと

 益田ミリさんの『前進する日もしない日も』を読みました。

 1~2ページぐらいでコンパクトにまとめられた日々の出来事がいくつも収録されたエッセイ集です。

 エッセイ、って好きです。何度も言っているかもしれないけれど、エッセイって好き。その人の世界の見方がわかるから。生活の営みを窺い知ることができるから。そうして、私の世界は少しずつ広がるような気がするから。

 ということで、『前進する日もしない日も』を読んで考えたことをまとめます。

前進する日もしない日も (幻冬舎文庫)

 40歳という歳

 このエッセイを読んでいて、段々見えなくなる前提が1つあるように思う。それは著者である益田さんの執筆当時の年齢「40歳」。すらすら流れるように読んでいるので、もはや気にならなかったけれど「40歳を迎える独身女性(一緒に住まわれている方の気配は、文章から漂ってくる)が何を見ているのか、この先についてどう考えているのか」という前提があって綴られているところは注目したい。

 話はズレるけれど、私は20歳を越えてからいわゆる「青春小説」を以前よりは読まなくなった。中学生・高校生が主人公となり展開される物語。昔はあれほど心惹かれ胸を躍らせて読んでいたはずなのに、今はどうも興味がわかない。もちろん、当時である程度有名な作品は読み尽くしてしまった、と考えることもできるけれど、もっと大事なのは主人公たちに「感情移入できない」ってところだと思うのです。私はもう、時間割に支配された閉鎖的な学校空間からは卒業してしまった。制服を着ることもないし、部活動に勤しむこともできない。主人公たちが置かれている場所とは違うところで生きている現実が、私を青春小説から遠ざけたように思います。

 と考えるならば、もしかしたらもう少し年を重ねてこの本は読んだ方が味わい深いのかもしれない、と思ったのだった。まだ40歳よりは16歳の方が年齢的に近いのだから。40歳の女性が抱える問題、想像はできるけれど実感はできない。まだまだピンとこないことも読みながらあったのかもな~と、思いました。

 

個別的事象からの一般論

 私は用語を無茶苦茶に使うような気がするので、こういう表現が正しいのかはわからないけれど。エッセイというのはとても個人的な考え方がわかる場所だと思う。その人がどう世界を見ているのか、私は知りたい、だからエッセイは好き、と冒頭で言ったけれど、エッセイを読む/あるいは小説を読む時のコツがあるとすれば、「前提を疑わない」だと思う。前提というのかな。文句をぐっとこらえて読むことが大事だと思っている。考えないで、ツッコミをいれないで、とりあえず文章が提示する世界を丸ごと認める(受け入れなくてもいい)ことなしには、エッセイや小説を読むことって難しいような気がするのだ。だって、自分と丸ごと同じ意見になど出会えるわけがないから。自分と違うということは違いがあるわけで、「ここはそうじゃないと思う」って思うところがあるということでしょう?そんなのいちいちあげつらっていたら、読み終えることなど、楽しむことなど、できません。

 つまり何が言いたいのかと言うと、エッセイを読みながら、私はいちいち「それってこういうこと」とは考えていないんだな~と思った、ということでした。

 エッセイには個別的事象がどんどん書かれている。こういうことがありました。こう言うことを感じました。私はそこで終わる。個々のエピソードがどういうことを象徴しているのか、何を映しているのか、そういうことまでは考えないのです。こう言うことを感じた。それってこういうことなんです。それは結構どうでもいいらしい(すいません指示語が多くて)。

 だから、この本を読みながら益田さんがどういう人なのか、ということは考えません。自分の中で言葉にもしていないような気がします。

 

 と言いつつエッセイとは日々の言語化である

 「自分の中で言葉にする」というのが、もしかしたら最近の私のテーマかもしれません。エッセイは日常を言葉でもって表現するもの。「自分はこういうことを感じた」 「こう思った」というのは、ちょっとした鍛錬というか習慣のような…?んーどうだろう、こういうところ、他の人と語り合ってみたいところであります。ずばり、あなたはよく考える人ですか考えない人ですか?

 口に出して発言する、というのとはちょっと違う。頭の中で考えが言葉として組み立てられていて、いざ発言しなさいと求められたら表現できる状態にすること、それが私の中でイメージしている「言語化」ってことなのか…な。難しいところであります。

 

 色々考えていたら、まとまらなくなりました。エッセイが気になるのだろうなぁ、と思いました。色んな人の色んな話を聞いてみたい、知りたいなぁと思いました。