根津と時々、晴天なり

大好きなものをひたすら言葉を尽くして語りたいブログです。

【読書】装丁が好きなので『蜜蜂と遠雷』を語るよ

 装丁が好きです。

 装丁ってつまりは「本のあらゆる見た目のデザイン」のことです。

 

 読書体験って、中身だけじゃなくて本全体で演出されるものでしょう?というのが、私の立場です。まあもちろん中身が大切であり、本の肝はそこなのでしょうけど。

 

 今日は、恩田陸さんの『蜜蜂と遠雷』という小説を買って改めて「装丁」っていいなぁと思ったので、語りたいと思います。ちなみにこれを書いている時点で、まだ中身は50%ぐらいの消化率です。2日で200ページ読んだけど、なかなか終わらねえ(好き)。

(という文章を書いて、1日後、読み終わることができました。好きです。この本。)

(という補足をして1週間後2巡目スタートしました。やはり好きです。この本。)

 単行本と文庫本

 装丁について語る前に、そもそもこの話抜きでは語るに語れないと思います。

 なぜなら「単行本」と「文庫本」について語ることは、私は何故装丁が好きなのか、ということに関わるからです。

 

 本の形態にはいくつか種類があると思います。

 大きいのが、「単行本」か「文庫本」か。最近は「電子書籍」というのもありますね。

 

 まずページをめくる楽しみや、残りのページを確認する、そういう「物質的体験」を私は大事にしているので「電子書籍」については語れません。ごめんなさい。さらに言うと、私の読書スタイルは専ら「図書館」で(それは買うお金がないから)今のところ電子書籍には馴染まないというのがあります。買えないし・・・本・・・。本棚にズラーっと並んでいる感じも「物質的体験」なので、場所とらなくていいでしょう?という電子書籍の魅力は私にとってはつらいものなのです・・・。

 

 次に「単行本」と「文庫本」の話ですが、現実的なことを考えると「文庫本」に勝ち目があります。単行本より安価ですし、場所もとりません。軽量なのでいくつも本を持ち歩く私としては肩こりに悩まされないで済む。

 

 ですが!

 

 理想を言えば、単行本なのですよ断然。私にとって「単行本」と「文庫本」の争いは、つまるところ「理想」と「現実」の争いなのです。

 

 私は最初にも挙げた通り、本というのは人々に対して、文字通り「全身」をフル稼働して読書体験を演出してくれるものです。「全身」とはすなわち、

 

ページ数、紙質、紙の色、重さ、栞の有無や色、帯、表紙のカバー、カバーを外した本体の質感、などなどなど

 

すべて、です。

 

 そもそも単行本であれこれ考えられた舞台の演出は、文庫本になるとそぎ落とされちゃうわけです。本としての多様性は、単行本の方が間違いなくある。私はそこに惹かれている。ということで、私は単行本派である。以上おしまい。

 

なのです。

 

 現実問題、スペースやお金の問題で単行本を今はたくさん買うことはできませんが、でっかい本棚を買って、そこに自分が気に入っている本をズラーっと並べるのが、私のささやかな、しかし大事な夢の1つです。

 

 さてさて。それでは具体的に『蜜蜂と遠雷』という本を例にとって、私がきゅんときた装丁ポイントを紹介しましょう。

 

①帯

 時々漫画を他の人から借りることがあります。

 その時とても興味深いのは、本に対する人々の価値観は全く違うということです。

 

 例えば、ある人は漫画を途中まで読んで開いたまま伏せることを良しとしませんでした。ページに癖がつくのが嫌なのだそうです。

 ある人は、帯から中に挟まっていた広告まできちんと保管している人でした。もちろん返すときも、きちんと帯をつけて返しました。

 

 私は、というと、大したこだわりはありません。帯は邪魔なのでとります。癖がついても大丈夫。湿気でくしゃくしゃになることがわかりきっているのに、お風呂に本をそのまま持ち込むこともあります。濡れても大丈夫。なんならペンで書き込みもいれてしまいます。これが私の「こだわり」です。

 

 帯をすぐに捨ててしまう私ですが、この本に限っては買ったあとでもずっと付けています。

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 この本は帯がかなり幅広なのがわかります。大体、本の縦の長さの半分くらいを帯が占めています。それだけに存在感がありますね。タイトルは『蜜蜂と遠雷』ですけれど、『蜂雷と蜜遠』と読めなくもない。

 

②表紙

 表紙は草原が絵筆のタッチで描かれています。なるほど。ピアノコンクールの話なので草原は関係ないと思いきや、結構関連したデザインだなぁと思います。読了後は特に。 

 

③本体

 

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 表紙を引き剥がすと黒色をした堅い本体が現れます。こういう本の質感はやはり文庫本だと味わえない楽しみです。堅くて安心感があります。

 

④ページと文字

 ページは500を超えている大作。しかも1ページで上下段にわかれて文章が続くので読みごたえがありますよ!これも楽しい。本を読み切ったときの快感は、ページ数が多ければ多いほど味わえるものです。

 

⑤雰囲気

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 スターバックスのラテをお供に、ちょっとリッチな気分。ラテをすすりながら、右手でページをめくる感じ。ちょっと有意義そうに思えるので私は好きです。やっぱり単行本が好きだ!

 

 

 

 ということで、お金はスペース、処分の問題はあるのですが、本それぞれのデザインや心意気が楽しめる単行本は読むだけではない楽しみを与えてくれるものです。文庫本とバランスをとりながら、お金にちょっと余裕があるなら単行本をこれからも増やしていきたいです。例えば図書館で借りた文庫本があまりにも素敵で手元に欲しくなったら、単行本で買い寄せるとか。いいですね。夢が広がります。