根津と時々、晴天なり

大好きなものをひたすら言葉を尽くして語りたいブログです。

【読書】2019年印象に残った本10選

 今年は(自分にしては)真面目に本を読んだ方なので備忘録。自分にしては、というのは、なんといっても図書館で延滞しなくなった、ということです。隔週本を返してまた借りてのリズムができたのは良かったなーと思います。

 挙げた本は私の中で今年印象に残った本でして、今年読んだことは間違いないですが2019年に刊行されたとは限りません。4と5と6と10あたりは今年刊行されたやつかな?割と多いな。

 

  1. 彩瀬まる『やがて海へと届く』
  2. 恩田陸『七月に流れる花』『八月は冷たい城』
  3. 中村安希『ラダックの星』
  4. 千葉雅也『アメリカ紀行』
  5. 小野不由美『白銀の墟 玄の月』
  6. 高田大介『まほり』
  7. 最果タヒ『君の言い訳は最高の芸術』
  8. 恩田陸木曜組曲
  9. 江國香織冷静と情熱のあいだ Rosso』
  10. 吉岡乾『現地嫌いなフィールド言語学者、かく語りき』

 

彩瀬まる『やがて海へと届く』

 彩瀬まるさんは2019年出会った作家さんの1人。なかでも最初に読んだこの本にがっつーんとやられて、その後きちんと新刊で本を買った。好きなところはたくさんあるけれど、やっぱり主人公の真奈ではない人間視点のところが特に好きだ。悲しいけれど、好きだ。

 小説にも色々あって、展開がまったく気にならないものもあればストーリーに重きを置いて読む話もある。この本は多分前者で、私はただひたすらにそこで描かれる一つひとつの描写が綺麗だなと思って読んでいた。小説だから出来ることがあって描けるものがあるなぁ、と思う。砂浜のシーンを読みながら死について考えてしまう。

やがて海へと届く

 

恩田陸『七月に流れる花』『八月は冷たい城』

 これはー装丁も素晴らしいので是非欲しいのですが(文庫本ではなく!)まだ手に入れられてませんシクシク。読みやすい本です。小中学生向けといっても問題ない文量だし夏休みの話ですから向日葵が咲く頃に是非読んでもらいたい。悲しい話だなと思って。なんだろう、結構悲しい話なんです。それを忘れたくないなと思わせる悲しさがあるから選びました。

七月に流れる花 (講談社タイガ)

八月は冷たい城 (講談社タイガ)

 

中村安希『ラダックの星』

 冒頭の数ページでガッと胸掴まれた記憶があります。『インパラの朝』よりもこちらの方が思考が連続していてその過程をずっと追えるのが好きかもしれません。

ラダックの星

 

千葉雅也『アメリカ紀行』

 こういう温度感の文章を書きたいなと思って。多分私がもっと知識ある人間であればこの本も違った読み方ができるのだろうなという気配があるのも、未来があって印象に残ってます。もうちょっと勉強します。

アメリカ紀行

 

小野不由美『白銀の墟 玄の月』

 十二国記は国記である、ということなのだと思うのです。でもまだ読み終わってない。読み終わってないのに載せるなよってのはごもっともなのですが、なんでしょう、でもこの作品挙げずに2019年の本について語ることはできないし、読み進められないのは私の所為なのです。集中が切れた。この話を読んでいて強く思ったのは、王と麒麟に仕える人々と、王と麒麟を信じる民衆の気高さと力強さでして、状況は一寸先は闇、王である驍宗は生きているかなんて誰にもわからない、王と麒麟を信じる根拠?なんて本当は無いだろうにずーーーーっと待っているし探すし希望を失わない人たち本当にすごいよ、ってことでして。そこが現実の社会で生きる私たちにはわかりづらいところなのかもしれないんですけれど、人間が濃いよーーーーーー。ということで頑張って読みます。私は学生時代に先輩に薦められてこのシリーズを読み始めたので、人の推薦侮っちゃいけないな、本と出会う良い機会だ!と思いました(それもあってこの記事を書いているというのもある)。気になる人は読んでみてくださいー。ちなみにシリーズ第一作『月の影 影の海』は最初から読むのしんどいですが、頑張って下巻までたどり着いてください。とりあえず読み切ろう!

白銀の墟 玄の月 第一巻 十二国記 (新潮文庫)

 

高田大介『まほり』

 二回読んだので感想書きたいのですがあまりに重たくて感想が書けないという本。重いというのは話のストーリーが、ではなく、中身が重たい。話も重たいのですが。すごいっす。文系の学生さんはみんな読んだ方がいいよという本でもあります。

まほり

 

最果タヒ『君の言い訳は最高の芸術』

 わたしは普段本を読んでるときはビニール製の付箋も一緒に手に握っていて、ペタペタ気になるところに貼ってあとで読み返すって作業をしてて(のりが残らないようにね!)この本には付箋がめちゃめちゃ貼られている(まだあまり読み返せてない証左でもある)。相性もあるしスタイルでもあると思う、この人の文章はまだ少し読みにくい。でもここで語られていることは「あ!わかる!」というものばかりで、今年の初めに読んで印象に残ってるので紹介させていただきやした。『もぐ∞』も好きです。青山ブックセンターで見つけました。

きみの言い訳は最高の芸術

 

恩田陸木曜組曲

 またしても恩田陸。かちゃかちゃと食器を鳴らしながら料理に舌鼓を打ちお酒で喉を潤し喋り疑心暗鬼になり落ち着きを取り戻し日常に帰っていく女たちの話。物書きたちの話ってのも好きだし、やっぱりよく喋るし考え方が好きなのだ(恩田陸作品は私に多大なる影響を与えていると思われる)。

木曜組曲: 〈新装版〉 (徳間文庫)

 

江國香織冷静と情熱のあいだ Rosso』

 江國作品というのは概して内省的だ。小説ってのはそういうものかもしれんがさらに深く深く沈み込むような思考が描かれていてそういうところが好きなのかもしれない。料理も美味しそうだし。

冷静と情熱のあいだ Rosso (角川文庫)

 

吉岡乾『現地嫌いなフィールド言語学者、かく語りき』

 滑り込み今年の印象的な一冊。読んでてめちゃめちゃおもしろかったです。言語学でも文化人類学でも通じるのが、言語も文化もそれぞれに優劣などないという考え方で、話し手が減少しているという言語も文法的にとても面白いとかそういう事はなくて。ただ話されなくなると記録することができないという点で、早く収集しないとねという視点が改めて考えれば「そうか」と思うけど、「え?死滅する?守らねば!」と思考停止に陥っていだなぁ…という気持ちです。

 

現地嫌いなフィールド言語学者、かく語りき。

 

 

 別に1年って区切らなくてもよくない?と年末になると思う天邪鬼な私ですが、区切るからこそこうやって振り返られるものがあるのも事実。1年やってきて、こんなに読んで面白かった~~~と思える本があったんですよ、ありがたい~~~~の思いです。これは絶対予想することができないことなので、なんか生きててよかったなって思いますね真面目に。来年も再来年も、生きてればまた本に出会えるのだと思うと結構楽しい。ま、この感覚も忘れてしまうのでしょうけれど、書き残しておくから後で思い出してください自分。