根津と時々、晴天なり

大好きなものをひたすら言葉を尽くして語りたいブログです。

【読書】本を買うことが好き

 その時私は、本棚の前に立ちながらとても後悔していた。

 労働の疲れと移動の面倒さ、夜の街を徘徊することの気疲れを想像したら、最寄り駅により近く大きな本屋さんを選んでいた。そのこと自体は別にいいのだけど、まさか自分が狙っていた本が無いとは…。それならば街の中心にある大きな大きな本屋さんに行けばよかった。人生においてはまったくもって問題ない程度の、しかし、確実な後悔。昼間、パソコンでカタカタ作業をしながら「あ、この本買おう」と思った。「また読みたいなぁ」と思った。だから退勤後本屋に行って買いに行こうと思った。でも、買えなかった。

 よくわからないのだが、「本を読むことが好きです」とも「読書は習慣です」とも言いにくい。前者は「好き、ってのとは違うしなぁ…」だし、後者は「でも習慣というほど自分の身体に根付いている感覚がない」という思いがあるからだ。それでも確かなことがあって、私にはそれが大切なことなのでこの文章を書いてみたってわけだ。このブログとは別で読書ブログもやっているのでそこで書けばよかろう!と指摘する人もいるやもしれんが、「本のこと」というよりは「私の好きなこと」なので、こちらに書くのがいい気がする。

 私が好きなこと。本を読むことは嫌いではないが、好きとは別。では何か。それは「本を買うこと」である。しかも我儘(我儘…?)なことに、文庫本ではなく、単行本、ハードカバーじゃないと駄目だ。絶対駄目。文庫本ってやつはあれはあれで心強い存在で、何より収納場所を確保するのにまだ手間どらない、かつ、版元問わず大きさは多分一緒だから収納しやすい、ええ、ええ、それはとても素敵なところだと思います。持ち運びもまだ楽。いいことたくさんだ。でも、私は単行本派である。中古で文庫本を買うのは躊躇わないが、単行本を買うときは躊躇する。新刊で買うべきだ、という悪魔の囁きが耳元で鳴る。

  話は変わるが、私の家族はまったく本を読まない。昔からである。家族親戚を真似て本を読むようになったわけではないことは確実だ。今でも私は「毎年誕生日になると古典名作図鑑、鬱陶しいけれどよくわからない本を包装して送ってくれるおばさん」ポジションを目指して日々生きている(色々ツッコみどころはあるだろうけれど、まあ、ね…)。私もそういうおばさんがいたらよかったな、と、ちょっと思っているのだ。包装紙で包まれた本!なんと素敵なことだろう。この年になっても憧れるし、なんなら自分用に買った本を包んでもらいたい(とてつもなく寂しいことを言っている気がするが真面目に言っている)。とにかく、私の身の回りではあんまり本を読む人がいなかった。

 では、何故本を読むようになったかというと、小学生のある学級がきっかけだった。その学級では担任の一声で1年間を通して手作りの読書感想ノートを作ることが義務付けられていた(義務である、恐ろしい)。見栄っ張り、かつ、負けず嫌いな私は、誰よりも本を読んで感想ノートのページを稼ぎたかった。ただそれだけだった。そのうち、学校の図書室で本を借りることが恒例行事になり、人と喋ることがそれほど得意ではないことも相まって、時間ができたら本を読むようになってしまった。義務、強い。

 深く丁寧に読むというよりは、さらっと流れるように読んでしまいがちで、そんな私の姿にお財布の心配をしだした母は、大事なことを教えてくれた。

「一回読んでもう一度読みたいなぁと思える素敵な本を買うようにしなさい」

 この教え(縛り)は今でも健在で、私はもっぱら図書館派、月10冊読んでも手持ちの本の数はあまり増えない。そういう読書スタイルが確立された。

 要はここで何が言いたいのかって言うと、私にとって本を買うってことはすごく、でかいのだ。壁なのである。アフリカ大陸の大地溝帯さながらの、大きな大きな境目なのだ。

 書籍は高い(高いよね、順当な値段だと思っているけど)。文庫本より単行本はちゃんと高い。でも、文庫本より本それぞれの特徴がある。書体も異なれば表紙のデザインも材質も異なる。栞紐がついていないものもあれば、ついているものもある。かたい本もあれば柔らかい本もある。それらの違いを含めて味わうことが私にとって何よりの贅沢だ。図書館で本を借りるとビニールでコーティングされてしまう。わからないのだ、2割減の楽しみである。

 

 そんなこんなで、読書の秋ですね。

 はい。

 実物を手に取ってからの判断になるけど、大体買う気でいます。珍しいです。私にとっては。でも、どの作者さんもすごく好きな既刊があって、だいたい文体を知っているし、もしかしたら「あれ?」ってなるかもしれないけど、本を私は買いたい!これ以上ものを増やしたくないのに!でも欲しい!

 

 文章の締め方がわからなくなりました。おすすめの本があれば教えてください。私が読む本は読書ブログの方へ(超宣伝)。というのも、私としては真面目に読んでいるのです、本を。

 2019年秋、すごいことになりそうです。わくわく。寿命がのびます。あと、冒頭で買おうと思って無くて悲しかった本は後日無事買うことができました。さくっともう一度読みました。幸せです。