読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

根津と時々、晴天なり

大好きなものをひたすら言葉を尽くして語りたいブログです。

#109 醍醐味は、おしゃべり ―恩田陸『消滅』を読んで―

20歳からの読書感想文

 読みました。

消滅 - VANISHING POINT

 

 恩田陸さんの『消滅』です。

【あらすじ】

 巨大台風が襲来している日本列島の空港で、当局側に足止めされた人々。彼ら彼女らの中に「テロリスト」が紛れ込んでいることだけはわかっているらしい。いくつかの条件によって絞られてしまった「テロリスト」と疑われてしまった男女、子ども、犬1匹?らは、「自分たちで推理してテロリストを見つけてください」と無理難題を提示されてしまう。果たして彼らは紛れ込んだ「テロリスト」を見つけることができるのでしょうか?

 

【話の感想】

 結末は「なーんだそういうこと?」というか、予想していなかった情報のカードが次々提示されてそれが結末を構成しています、みたいな感覚を覚えました。いや、伏線というかちゃんとカードは提示されていたんだけど、「消滅」の意味はそのカードをもってしても導けないと思うなぁ~私は。ということで、ミステリっぽいけれどミステリじゃないと思います。どっちかというと、SFなお話。「ロボット」と呼ばれる存在を、恩田さんがこう解釈しました、こう思いました、ってことを発表しているみたい。

 

 結論から言うと、私は「楽しめました」。

 で、言いたいことは、恩田さんの作品の醍醐味はタイトルにもありますように、「おしゃべり」なのだと思います。話の本筋が面白いものもあるけれど、私が彼女の作品で一番楽しんでいるところ、惹きつけられているところは、登場人物たちのだらだらとした(失礼)会話だったりするのです。今日はそこのところをもう少し語りたいと思います。

 恩田陸作品における「おしゃべり」

 私は、恩田陸作品をそこらへんの人よりかは多く読んでいる気がするけれど、全作品に通暁しているわけではありません。というか全然読み込めていない。これからも読んでいきたいとは思っている。

 

 恩田作品を読んでいて、1つ共通しているところというか、特徴に挙げられるのが、登場人物たちの「想像力の豊かさ」ではないかと思います。

 私は恩田作品を、読書経験の初期からすでに読んでいますが、最初読んだ時は、小説の登場人物たちは1つひとつの物事にここまで考えを巡らせているのか、と眩暈がしたほどです。とにかく何かについて考えざるを得ない。思考が止まらない。想像の世界が拡張していく。当時の私はそこまで物事を深く考える人間ではなかったので、何でこんなに考えるのか、フィクションの人物たちに対して疑問しか浮かびませんでした。

 そして、なんとまあ、おしゃべりが好きだこと。他愛のない話が、コロコロと展開されていく様は、驚きと共に、自分の見方が変わっていく感覚をおぼえました。そのおしゃべりで展開される持論は、恩田さんのものなのでしょうか?それとも創作?でも、作品は違えど、おしゃべりの中の持論は結構共通しているものがあると思うんですよねえ。だからこそ、私は今も彼女の作品を読み続けていられる。

 もし恩田作品が肌に合わないとすればそれは色んな理由があるのでしょうが、登場人物たちがおしゃべりしている内容もピンとこない、ってことがあるのかもしれない。ふとそんなことを考えておりました。

 

『消滅』における「おしゃべり」

 本作でも複数の登場人物の視点にそって物語が進んでいきます。

 飛行機が好きすぎる人もいれば、飛行機は苦手で体調を悪くしている人もいれば、着陸と麺がセットになっている人もいれば、いつも不審者に間違われてしまう人もいる。それぞれに、それぞれに哲学めいた価値観があり、どれも「なるほどな」と思ってしまう。それぞれが好き勝手に想像するものだから、それだけでお腹いっぱいでした。

 色んなおしゃべりがありましたけれど、「ロボット」と有機的な「人間」との差異は何か?ロボットに代替される未来はどうなるのか。何をもって人間なのか。ロボットに感情は、性格はあるのか。そういう近未来の問題が豊かな想像力もって様々に語られるのは読んでいてとても面白かったです。恩田さんはとても想像力がある方だと思われます。

 

 

 「もし○○だったら?」と言うことを最大限楽しむのが、読書の醍醐味であり、物語の面白さなのだと実感したお話でした。