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根津と時々、晴天なり

大好きなものをひたすら言葉を尽くして語りたいブログです。

#59 【戯言】世界の輝き

 平日のある朝のこと。


 定期を落とした。私は時々忘れ物、落し物をする。予定は覚えてるけど、些細な思いつきや、やらないといけないことは、よく忘れる。

 授業にはどのみち間に合わない。これまでの経験上、必ずどこかで見つかるだろう、と思った。そして案の定乗り換えの駅で見つかった。てっきり電車の中だと思ってたけど。時計を見る。やっぱり授業には間に合いそうにない。

 落とした場所まで戻る。再度電車に乗ろうと思った時、丁度電車が来た。でも思いの外人数が多くて電車は9割くらい乗ってる。焦ることでもないし次の電車で行こう。そう思ったら、次の電車には小学生がざぁーっと乗っていた。少し躊躇う。どうしようか?車内の余裕はあるけれど、うるさいだろうか?一瞬考えた末、無理して乗る必要は無かったけど、乗ることにした。

 私の近くにもまだ小学生の子どもはたくさんいるからわかる。小学生というのは元気が有り余っている存在だ。大人しくしていろ、という方が土台無理な話なのだと、最近思うようになった。だから少しイライラするけど、子どもの賑やかさはそういうものなのだと思った。でも、乗り合わせた小学生軍団はとても大人しかった。小学校低学年。あの頃の記憶はあまりないけど、私は間違いなく無敵だった。そうか、こんなに大人しいのか、小学生、と拍子抜けした。きっと、乗る前に散々先生やら大人に言われたのだろう。
「電車の中では静かにするようにね」
だけど、ちょっと違うように思えてきた。電車が走り出すと、1人、また1人とドアの近くに寄ってくる。声には出してないけど期待と興奮が伝わってくる。電車にそれほど慣れた子ばかりではないだろう。(私は間違いなくこのぐらいの年のときは電車に乗っていなかった。)
 見る見るうちに、窓の外の建物が後ろに残されていく。少し高いところから世界を見る。今日は空が青い。外の世界は光に満ちていた。わくわくしたのだろうか、君たちは。
 この電車に乗る多くの大人たちは、君たちのように世界を見ることはない。私も、同様に。だからこそ、この10分間、私は小学生たちが羨ましくなった。ずっと見ていたい。なんでそんなに目を輝かせられるのかな?自然の口元が緩み、笑ってしまう。微笑ましい、ということは、まさにこういうことだ。

 私が下車する駅の遥か手前で小学生軍団は降りた。下車する予定だろうか?その駅に近づくと、どことなく不安そうにソワソワする感じも可愛かった。そうだね、その記憶はかすかに私にもあったな。降りる駅は3駅目だよ、と言われて、必死で数えてた。忘れないように、忘れたら死んじゃう、ぐらいの必死さで。
 
 授業を休んだのは痛いけど、定期を落として良かったかもな。そう思った、ある平日の朝。

(それにしても、先生方は大変だ。目がいくらあっても足りないだろうな。)